※本ブログの問題は一般社団法人日本ソムリエ協会が発行している「日本ソムリエ協会教本(2020)」をもとにしています。
ソムリエ・ワインエキスパート試験対策
本記事では、ソムリエ・ワインエキスパート試験にて出題されそうな問題について小テスト形式でご紹介します。何度も問題を繰り返すことで、身についていくと思いますので、コツコツと一つずつクリアしていきましょう。また、選択肢に表示されている単語で、知らない単語などがあればそちらもチェックしておきましょう。
今回はスペインです。フランス、イタリアでもまず地理関係を把握する事をおススメしましたが、スペインに関しても主要都市の位置関係などを合わせて覚えた方が記憶しやすいと思います。まずは全体像を確認しましょう。
なお、以前にスペインワインについての紹介記事を書きましたので、まず下記の記事をご覧いただく事をおススメ致します。
スペインのポイント
・ワインの熟成規定をチェックする(後述)
・ワイン法(D.O.Ca、D.Oなど)を覚える (後述)
・ブドウ品種・テンプラリーリョの別名(シノニム)をチェックする(後述)
・D.O シェリー(酒精強化ワイン)の製法と規定について覚える(南部地方の回で紹介)
・D.O カバ(発泡性ワイン)の製法と規定について覚える(地中海地方の回で紹介)
スペインでは熟成規定が厳しく定められており、この規定を満たしたワインは、特定の表示をする事ができます。ソムリエ・ワインエキスパート試験的にも出題されやすいポイントですのでチェックしておきましょう。また、D.OシェリーとD.Oカバというスペインを代表する2種類のワインについては、製造方法などが問われやすいですので覚えておきましょう。
スペインワインの歴史
スペインにブドウ栽培が伝わったのは紀元前1100年頃のことで、フェニキア人が大西洋岸の町で現在のカディスに到達してワイン造りを行ったと言われています。その後、紀元前200年頃にやってきたローマ人によってワイン造りが盛んになりました。
711年にアフリカから来たイスラム教徒のムーア人の影響で、ワイン造りの規模は縮小するものの、一部のブドウ栽培とワイン造りは継続されます。その後、キリスト教徒によるレコンキスタ(国土回復運動)が始まり、ワイン造りは再び活気を取り戻します。
19世紀後半では、フィロキセラ(アブラムシの一種)によって壊滅状態となったフランスのワイン生産者が移住し、醸造技術も大幅に進歩します。1970年代に独裁政権から立憲君主制へ、1986年に欧州経済共同体(EEC)に加盟後はこれまで無名だった各地のワイン産地で世界的に注目を集めるワインが次々に誕生していきました。
なお、国が「ワイン法」を制定したのが1932年で、これに基づき原産地呼称制度ができました。このワイン法が発行されたのが1933年で、フランスのA.O.C.原産地呼称制度が生まれた1935年より早いことを覚えておきましょう。
スペインの全体像
スペインでは17の自治州が存在しますが、まずは5つの地方を覚えることから始めましょう。各地域にはそれぞれ特徴がありますので、一つずつ覚えていくことが大切です。
スペインのワイン用ブドウ栽培面積は世界1位、ワイン生産量でも世界3位(2017年時点)と、世界でも有数のワイン生産国です。また、ワイン輸出量でも世界1位、金額では世界3位(2016年時点)と海外にも多くのワインが輸出されています。
最も生産量が多いのは内陸部のカスティーリャ・ラ・マンチャ州で、全体の50%近くを占めます。スペインは赤ワインのイメージが強いですが、赤ワインと白ワインの比率はほとんど変わりません(若干赤の方が多い)。
各地域の特徴については、次回以降に詳しくご紹介したいと思います。
スペインのワイン法
ヨーロッパのワイン法では、①原産地呼称保護(D.O.P)、②地理的表示保護(I.G.P)、③その他という分類がありました。フランスでは①は「A.O.C (A.O.P)」、イタリアでは①はD.O.C.G、D.O.Cというように呼ばれていましたね。
スペインでは①の原産地呼称保護が、もう少し細かく分類されるので注意しましょう。
原産地呼称保護①:ヴィノス・デ・パゴ(V.P.)
単一ブドウ畑ワイン。2003年のワイン法改正で新たに設けられました。地域ではなく独自の特徴を持つテロワールが認定されるようです。
ヴィノス・デ・パゴについて
ソムリエ教本では、各州ごとにヴィノス・デ・パゴ(V.P.)が記載されていますが、とりあえず本ブログでは、次回以降の各地方の紹介時には記載しない事に致します。(恥ずかしながら、ワインエキスパート受験時は、出題されても120問中1問だろうという事で覚えない事にしました・・・)文字数も多くて結構覚えるのは大変です。こちらは、別途時間のある時に紹介しようと思います。
原産地呼称保護②:デノミナシオン・デ・オリヘン・カリフィカーダ(D.O.Ca.)
特選原産地呼称ワイン。D.Oワインの中から、厳しい基準で昇格が認められた高品質ワインです。1991年に認定された「リオハ」と、2009年に認定された「プリオラート」の2つしかありません。
原産地呼称保護③:デノミナシオン・デ・オリヘン(D.O.)
原産地呼称統制委員会が設置された地域において、地域内で栽培された認可品種を原料とし、厳しい基準に基づき認められています。原産地名と「デノミナシオン・デ・オリヘン」の表示をしますが、2つだけ例外として、「シェリー」「カバ」のみはそれぞれの名前だけ表示すればいいことになっています。
また、D.O.ワインに認定されてから10年後には、さらに上位にあるD.O.Caに昇格申請が可能です。
原産地呼称保護④:ヴィノ・カリダ・コン・インディカシオン・ヘオグラフィカ(V.C.)
地域名付き高級ワインの意味。2003年の法改正によって新設されたカテゴリーで、特定の地域で収穫されたブドウを原料として醸造、熟成されたその地域性を表現したワインが認められています。
また、このカテゴリーで5年以上実績を積んだ生産地はD.Oワインへの昇格申請が可能です。
地理的表示保護:ヴィノ・デ・ラ・ティエラ
I,G.Pと呼ばれるその産地の特性を持つワインです。
その他のワイン:ヴィノ
その他の原産地呼称も地理的表示保護も名乗れないワイン全てです。日本にはほぼ入ってきません。
スペインのブドウ品種
テンプラ二ーリョ(赤ワイン)
スペインの代表的な品種は、黒ブドウのテンプラニーリョです。赤ワインは、まずこの品種をチェックしましょう。全ブドウ品種の21%を占めるこの品種は、地域によって呼び方が変わるのが特徴です。
リベラ・デル・ドゥエロ : ティントフィノ、またはティント・デル・パイス
ラ・マンチャ : センシベル
ペネデス(カタルーニャ州): ウル・デ・リェブレ
トロ : ティンタ・デ・トロ
マドリッド : ティンタ・デ・マドリッド
アイレン(白ワイン)
白ブドウは、スペイン最大の栽培面積を誇るアイレンをチェックしましょう。主に、スペインの内陸部・マドリッド周辺で生産される白ワイン用ブドウ品種に用いられます。マドリッドの南にあるラ・マンチャでは、すっきりとしたフレュシュな白ワインがこのアイレンを主体として生産されます。
他にも様々な品種が栽培されていますが、次回以降の各地方の紹介時にご紹介したいと思います。
スペインの熟成規定について
スペインは、特に樽による熟成規定が厳密に定められています。一般的にアメリカのオーク或いはフランス産オークから作られた樽が用いられ、熟成年数の順に、Crianza(クリアンサ)・Reserva(レゼルバ)・Gran Reserva(グランレゼルバ)と表記することができます。ちなみに、リオハのように後述する条件より長い熟成期間や独自の樽容量を定めているD.O.Pもありますのでご注意ください。
なお、「カバ」は以下の熟成規定とは異なりますので注意してください。次回以降にご紹介したいと思います。
①Crianza(クリアンサ)
赤ワインは24か月(内6ヵ月以上は樽熟成)、白・ロゼワインは18か月(内6ヵ月以上は樽熟成)
②Reserva(レゼルバ)
赤ワインは36か月(内12ヵ月以上は樽熟成)、白・ロゼワインは24か月(内6ヵ月以上は樽熟成)
③Gran Reserva(グランレゼルバ)
赤ワインは60か月(内18ヵ月以上は樽熟成)、白・ロゼワインは48か月(内6ヵ月以上は樽熟成)
また、高級ワインではない、一般的なワインとしては、樽の上限を600Lとし、熟成年数に応じて以下の表記がされている場合もあります。クリアンサ、ㇾゼルバ、グランレゼルバとは区別して覚えましょう。
①Noble(ノーブレ)
オーク樽又は瓶で、最低18ヵ月熟成
②Anejo(アニェホ)
オーク樽又は瓶で、最低24ヵ月熟成
③Viejo(ビエホ)
最低36ヵ月熟成させ、太陽光、山荘、外気の高温など自然の作用で酸化熟成させたワイン
こちらは分かりやすいと思いますので合わせて覚えておきましょう。
第31回小テスト:スペイン① 概論
第31回:スペイン① 概論
第31回:スペイン① 概論

最後に
スペインのワインは、熟成規定をはじめとして数字を覚える部分も多いですので、一つずつ確実に覚えていきましょう。次回以降は各地方毎に覚えるべきポイントを紹介していきます。問題を解きながら地道にこなしていく事が大事です。
(参考)ソムリエフォーフリー
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