【ソムリエ・ワインエキスパート試験/対策問題】第41回:オーストラリア① 概論

※本ブログの問題は一般社団法人日本ソムリエ協会が発行している「日本ソムリエ協会教本(2020)」をもとにしています。

ソムリエ・ワインエキスパート試験対策

 

本記事では、ソムリエ・ワインエキスパート試験にて出題されそうな問題について小テスト形式でご紹介します。何度も問題を繰り返すことで、身についていくと思いますので、コツコツと一つずつクリアしていきましょう。また、選択肢に表示されている単語で、知らない単語などがあればそちらもチェックしておきましょう。

 

今回はオーストラリアです。2018年にソムリエ・ワインエキスパート試験がテストセンター制に移行してから、フランスやイタリアなどこれまで出題されていた範囲が縮小し、様々な国から出題されることに。また、テストセンター制は受験生によって問題を変える必要があるため、問題のストック数を増やした結果、オーストラリアやニュージーランドもかなり細かい所まで問われるようになりました。

 

大変だと思いますが、まずは基本をおさえて、少しずつ肉付けするイメージで頑張りましょう。いつも通り最後には小テストをつけていますので、問題をこなしながら自分のモノにしていく事が重要です。

 

オーストラリアのポイント

 

・オーストラリアはまず4つの州(南オーストラリア州、西オーストラリア州、ニュー・サウス・ウェールズ州、ヴィクトリア州)をおさえて、各州の産地を間違えないように

・余裕があれば残りの2州(タスマニア州とクイーンズランド州)に目を通す

・各産地の特徴とブドウ品種(シラーズ?カベルネ・ソーヴィニョン?シャルドネ?リースリング?)を掴む

 

まず大事なのはたくさん出てくる産地名がどこの州の産地なのか?ブドウ品種は何が特徴なのか?という事です。フランスやイタリアのように、生産色を問われる問題はほぼないですのが、品種に関してはある程度意識する必要があります。

オーストラリアワインの歴史

 

1788年、ニュー・サウス・ウェールズ州の提督・アーサー・フィリップ大佐がシドニーにブドウを持ち込んだ事から始まります。その後、1825年にはジェームズ・バズビーによって、ハンターヴァレー(ニューサウスウェールズ州)に本格的なブドウ園が開設されます。ジェームズ・バズビーは「オーストラリアワイン用ブドウ栽培の父」とも呼ばれています。この2人は要チェックです。

 

また、オーストラリア発の生産技術刷新で重要なのはクレア・ヴァレーのワイン生産者が2000年ヴィンテージから白ワインにスクリュー栓を採用した事です。ここから、ニュージーランド、チリ、フランスのシャブリ、ドイツなどに広まり、今ではスクリュー栓も市民権が得られるようになりました。

 

また、ソムリエ教本には和久田哲也さんがシドニーに開店した「Tetsuya’s」も紹介されています。

 

オーストラリアのブドウ品種

 

オーストラリアのブドウ品種は、独自で開発された交配種を除く、全てヨーロッパから移植されたものです。したがって、ヨーロッパを先に勉強していればイメージしやすいでしょう。

黒ブドウ

黒ブドウは「シラーズ」が1位、その後に「カベルネ・ソーヴィニョン」が続きます。黒ブドウと白ブドウを合わせてもシラーズが1位です。「シラーズ」はフランス・ローヌ地方などで栽培されている「シラー」がオーストラリアで独自の進化を遂げた品種で、オーストラリアを代表するブドウ品種となりました。

 

シラーとシラーズとの違いは以下の記事で過去にご紹介しておりますので、こちらをご覧ください。

 

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白ブドウ

白ブドウの1位は「シャルドネ」です。その後に「ソーヴィニヨンブラン」が続きます。

 

「シラーズ」は元々は「シラー」からきていますので、多くはこれまで勉強したブドウ品種だと思います。全体では「シラーズ」、白ブドウは「シャルドネ」と覚えておきましょう。また、産地ごとにカベルネ・ソーヴィニョンやリースリングなどシラーズ以外のブドウ品種が特徴的な産地が登場しますので、それらは個別に覚えるようにしましょう。

 

オーストラリアの全体像

 

オーストラリアの重要なポイントの一つとして「緯度」があります。標高や地域風など様々な条件で変化しますが、一般的に「ワインベルト」と呼ばれる北緯(南緯)30度から50度の間でブドウ栽培が可能です。そのため、オーストラリアのブドウ栽培地域は南に集中しています。ちなみに、オーストラリアでは南緯31度から43度にブドウ栽培地域が分布しています。(クイーンズランド州は入ってない?)

 

まずは、生産量の大半を担う「南オーストラリア州」をチェックしましょう。試験的にも狙われるポイントです。世界で最も古いシラーズのブドウ樹が存在する州です。産地によって、シラーズの他にカベルネ・ソーヴィニョンやリースリングが中心となっている産地もあります。これは次回以降にご紹介します。なお、国内ブドウ生産量の約半分(51%:2018年)が南オーストラリア州で州別でも1位です。

 

ニュー・サウス・ウェールズ州(ブドウ生産第2位:約23%)は、オーストラリアのワイン産業の起源となった場所です。アーサーフィリップ大佐がシドニーにブドウを持ち込み、その後、ジェームズ・バズビーが「ハンター・ヴァレー」に本格的なブドウ園を開園させました。

 

ヴィクトリア州(ブドウ生産第3位:約16%)は、中小規模の生産者が中心のワイン産地で、1860年代、イギリス向け輸出量が国内最大であったことから、当時は「英国民のブドウ畑」と呼ばれていました。

 

西オーストラリア州は、生産量としては全体の8%程度(国内生産量第4位)ですが、高価格帯のワインが多く、品質は国内トップクラスです。

 

タスマニア州(国内生産量第5位)は、冷涼産地であることから、黒ブドウではピノ・ノワールの重要産地です。また、タスマニアの特徴的な土壌である「ジュラシック・ドレライト(ジュラ紀の粗粒玄武岩)」を覚えておいてください。重要産地は「テイマー・ヴァレー」、「パイパーズ・リヴァー」などです。

 

クイーンズランド州(国内生産量第6位)は、ワインベルトから外れているもののブドウ栽培が行われている地域が一部あります。日常消費ワインから始まり、今日では高級ワインも生産されているそうです。「グラニット・ベルト」と「サウス・バーネット」という2つの産地をチェックしておきましょう。

 

タスマニア州とクイーンズランド州は、上述した内容を覚えればとりあえずは大丈夫だと思いますので、次回以降の各州の説明には含めません。

 

オーストラリアのワイン法

基本的なルール

ワインオーストラリア公社(WAC)により、様々なオーストラリアワインの規定が定められています。また、オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)により、アルコール4.5度未満はワインとは認められていません。また、補糖も認められておらず、酸化防止剤、保存料の表示が義務付けられ、その番号がラベルに記載されます。

 

220-亜硫酸(二酸化硫黄)

200-ソルビン酸

300-アスコルビン酸(ビタミンC)

 

地理的呼称(Geographical Indication:GI)

特定の地域で収穫されたブドウで造られたワインに表示を認める事で、地名の利用を保護し、それと同時に表示の信憑性を確保して消費者の権利を保護する目的で始められました。ヨーロッパの原産地呼称制度に似ていますが、厳格な規定や制約はなく栽培・醸造面での自由度が高いことが特徴です。

 

特定のGIで算出されたワインが85%以上含まれている場合に表示できます。また、ヴィンテージの表示は特定のヴィンテージのワインが85%以上、ブドウ品種の表示も85%以上あれば認められています。つまり、85%以上含まれていればイイわけですね。

 

酒精強化ワイン

 

オーストラリアでは、実は1930年代から1960年代までは、酒精強化ワインの生産量がワイン全体の70%を占めていました。それだけに、ソムリエ・ワインエキスパート試験でも酒精強化ワインから出題されています。

 

主な生産地はバロッサヴァレー(南オーストラリア州)とラザグレン(ヴィクトリア州)です。2008年にEUとの合意により、2010年からは国内含め「ジェネリックワイン」の名称(ポート、シェリーなど海外のワインの名称を引用したもの)が使用できなくなりました。そのため、2010年からは独自の名称に変更されています。

※ワイン先進国のおこぼれを頂戴したいという事で、各国の有名なお酒の名前を勝手につけていたわけです。

 

アペラ(元々はシェリーとして販売)

カテゴリーは、ドライ、ミディアムドライ、スイート、クリームの4種類です。スペインのシェリーから来ていますが、当然現在はシェリーという名前は使われておりません。

 

フォーティファイド(元々はポートとして販売)

カテゴリーは、ヴィンテージとトゥニーの2種類です。ポルトガルのポートから来ていますが、当然現在はポートという名前は使われておりません。トゥニーはシラーズ、グルナッシュ、ムールヴェードルから、ヴィンテージはシラーズから造られることが多いです。

 

トパーク(元々はリキュール・トカイとして販売)

ラザグレン、クラシック、グランド、レアの4等級が生産されています。ハンガリーのトカイから来ていますが、当然現在はトカイという名前は使われておりません。ブドウ品種はミュスカデルが用いられます。ラザグレンが主要産地です。

 

第41回小テスト:オーストラリア① 概論

 

第41回:オーストラリア① 概論

第41回:オーストラリア① 概論

 

最後に

 

ソムリエ教本におけるオーストラリアの項目は非常に細部まで書かれており大変勉強になります。その反面、テストセンターに移行してからは重箱の隅問題としても狙われやすい国にもなりました。まずはご紹介したポイントについて問題をこなしながら覚えていきましょう。次回以降は4州(南オーストラリア州、ニュー・サウス・ウェールズ州、ヴィクトリア州、西オーストラリア州)の特徴についてご紹介していきたいと思います。

 

 

(参考)ソムリエフォーフリー

 

 

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