【ソムリエ・ワインエキスパート試験/対策問題】第51回:ドイツ① 概論

※本ブログの問題は一般社団法人日本ソムリエ協会が発行している「日本ソムリエ協会教本(2020)」をもとにしています。

ソムリエ・ワインエキスパート試験対策

 

本記事では、ソムリエ・ワインエキスパート試験にて出題されそうな問題について小テスト形式でご紹介します。何度も問題を繰り返すことで、身についていくと思いますので、コツコツと一つずつクリアしていきましょう。また、選択肢に表示されている単語で、知らない単語などがあればそちらもチェックしておきましょう。

 

今回はドイツです。ドイツもソムリエ教本ではボリュームがあってどこまで覚えるか難しいところです。今回は全体像とワイン法に絞ってご紹介し、次回以降は産地毎の特徴をまとめていきたいと思います。

 

ワイン生産地域としては北緯47度から52度というかなり北に生産地域が集中しているドイツ。白ワイン用品種がブドウ畑の66.5%(2018年)を占めています。

 

ドイツのポイント

 

・ワイン法と品質分類は特に注意する(今回)

・13の生産地域の場所を覚え、産地毎の特徴をしっかり掴む(次回以降)

 

ドイツの地域名や品質分類は少々覚えづらい事が難点です。まずはワイン法と品質分類について理解し、その後13の生産地域を覚えて産地毎の特徴をしっかり掴みましょう。

 

ドイツワインの歴史

 

ドイツワインの歴史は紀元前5~4世紀に遡ります。当時ライン川やモーゼル川周辺のケルト族が地中海産のワインを輸入していたことがわかっています。その後、6~7世紀にかけて宣教師がキリスト教を布教すると共に各地にブドウ栽培が広がっていきました。

 

800年に西ローマ皇帝となった「カール大帝」が、各地に勅令を出して適切なブドウ栽培と衛生的な醸造を支持し、協会や修道院にブドウ畑を寄進してワイン造りの普及に貢献しました。

 

18世紀に入るとブドウ栽培の改善が各地で行われました。1720年にヨハネスブルクでリースリングの苗木が大量に植樹されました。シュタインベルグでは貴腐ブドウの収穫が行われ、ヨハネスブルクでは1775年から貴腐ワインの醸造が毎年試みられるようになります。1867年にはラインガウ、1868年にはモーゼルでブドウの格付けが行われました。

 

第二次世界大戦後は甘口ワインがブームとなりますが、1985年、オーストリアに端を発したジエチレングリコール混入事件で甘口ワインへの不信感が蔓延し、そこから国内向けは白ワインは辛口にシフトし、赤ワインは1995年半ばからの世界的な赤ワインブームによって生産量が増加しました。

 

ドイツでチェックすべきブドウ

白ブドウ

白ブドウの栽培面積トップはリースリング(ライン・リースリング)で黒ブドウと合わせてもトップです。

 

黒ブドウ

黒ブドウはシュペート・ブルグンダーがトップです。シュペート・ブルグンダーはフランスではピノ・ノワールと呼ばれています。

 

交配種とシノニム(別名)

シュペート・ブルグンダー(ピノ・ノワール)のように、ドイツには非常に多くの交配種とシノニムが存在します。結構覚えるのも大変ですが、消去法でも大丈夫ですので間違えないようにしましょう。ちなみに、スイスやオーストリアでも以下の品種のいくつかが再登場しますので、そちらを勉強した後に戻ってくるのも一つの作戦です。

白ブドウ

[交配種] ミュラー・トルガウ(リヴァーナー) = リースリング × マドレーヌ・ロイアル (白ブドウ2位)

・グラウブルグンダー(ルーレンダー、ピノ・グリ)(白ブドウ3位)

・ヴァイスブルグンダー(ピノ・ブラン)(白ブドウ4位)

[交配種] ケルナー = トロリンガー × リースリング(白ブドウ6位)

[交配種] バッフス = [シルヴァーナー × リースリング] × ミュラー・トルガウ(白ブドウ8位)

[交配種] ショイレーベ = リースリング × ブケットトラウベ(白ブドウ9位)

・グートエーデル(シャスラ、ファンダン)(白ブドウ11位)

黒ブドウ

[交配種] ドルンフェルダー = ヘルフェンシュタイナー × ヘロルドレーベ (黒ブドウ2位)

・トロリンガー(フェルナッチ、スキアーヴァ)(黒ブドウ4位)

・レンベルガー(ブラウフレンキッシュ)(黒ブドウ5位)

・シュヴァルツリースリング(ミュラー・レーベ、ピノ・ムニエ)(黒ブドウ6位)

[交配種] レゲント = [シルヴァーナー × ミュラー・トルガウ] × シャンボールサン (黒ブドウ7位)

[交配種] ドミナ = ポルトギーザー × シュペート・ブルグンダー (黒ブドウ12位)

 

レゲントは念のためチェックしておきましょう。2000年代に入り有機農法に取り組む生産者が増え、黴菌耐性品種(PIWI)が注目されるようになってきました。レゲントはこの代表的な品種です。

 

ドイツのワイン法

ワイン法の歴史

ドイツが初めて統一されたのが1871年で、最初のワイン法が成立したのは1892年の事です。1971年に施行されたワイン法により、ワインの格付けシステムが根本から変わります。収穫時の果汁糖度に応じて格付けされる事になりました。

 

2009年にEU全域で地理的呼称制度が施行されますが、その表記は任意とされ、収穫時の果汁糖度による肩書きは伝統的表記として維持されています。

 

品質分類

13の特定ワイン生産地域(ベシュテムテス・アンバウゲビート)があり、この特定ワイン生産地域でのみ、2種類の高品質ワインを生産する事が可能です。次回以降にご紹介しますので13の生産地域の位置関係と特徴は必ず把握するようにしましょう。

 

原産地呼称保護ワインは①のクヴァリテーツヴァインと②のプレディカーツヴァインをチェックしてください。②のプレディカーツヴァインでは収穫時の果汁糖度が非常に重要です。なお、果汁糖度の単位「エクスレ」は、1830年代にドイツ人技師・フェルナンド・エクスレから来ています。彼が提唱した比重計によるブドウ果汁糖度によって6つの肩書きに分かれます。最低アルコール度数を含めて順番を頭に入れおきましょう。

 

また、収穫後の果汁の一部を発酵させないまま保存したものを用いて甘味調整やバランスをとることが許されています(25%以内)。これを「ズュースレゼルヴェ」といいます。

 

スパークリングワイン

パールヴァイン

弱発泡性のワインで、イタリアのフリッツァンテ、フランスのペティアンに相当します。

シャウムヴァイン、ゼクト

発泡性のワインですが、シャウムヴァインは炭酸気圧が20℃で3.0bar、アルコール濃度9.5%以上。ゼクトは炭酸気圧が20℃で3.5bar、アルコール濃度10%以上の基準があります。また、ドイツ国内産のベースワインから生産したものを「ドイッツァー・ゼクト」、さらに、特定ワイン生産地域で生産されたクヴァリテーツヴァインから生産されたものを「ゼクトb.A」.と呼びます。ゼクトb.A.は以下2つのカテゴリがあります。

 

①ヴィンツァーゼクト:自家醸造したベースワインを自家醸造もしくは委託してゼクトに仕立てたもの。

②クレマン:高品質なゼクトb.A.で、手作業で収穫するなど様々な規定がある

 

ペット・ナット

一次発酵の途中で瓶詰めして炭酸をワインに溶け込ませるメトード・アンセストラルと同様の方法で醸造するスパークリングワイン

 

なお、ドイツのスパークリングワイン等の残糖量表示については以前まとめましたので、そちらからご確認ください。

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ロゼワイン

ヴァイスヘルプスト

単一の赤ワイン用品種から醸造されたロゼワインの一種で、クヴァリテーツヴァインかプレディカーツヴァインであることが必要です。

 

ブラン・ド・ノワール(ヴァイス・ゲケルテルト)

赤ワイン用品種のブドウを、白ワインのように発酵前に圧搾して得た果汁から醸造したワイン。外見は基本的には白ワインです。

 

ロートリング

赤ワイン用ブドウと白ワイン用ブドウ、もしくはそれぞれ破砕して果汁に漬けた状態で混ぜて一緒に醸造したロゼワイン

 

ビオワイン

ドイツでも有機農法に取り組む生産者団体がいくつもあります。最も規模が大きいのは1985年設立のECOVINで、2018年時点で238軒が加入しているそうです。他にもソムリエ教本に記載がありますが、余裕があれば目を通すぐらいでいいのではないかと個人的には思います。

 

V D P ディー・プレディカーツヴァインギューター(プレディカーツヴァイン醸造所連盟)

 

V D Pとはドイツのブドウ畑の格付けを推進している生産者団体です。ラインガウを皮切りに各地で生産者団体が結成され1910年に全国組織が成立しました。その後、何度か改名し、2000年からはV D P ディー・プレディカーツヴァインギューターと名乗っています。現在はおおよそ200の会員が加盟しています。

 

加盟生産者は厳しい自主規制に基づいて様々な面から検査されており、4段階の品質基準が定められています。

・グローセ・ラーゲ(特級区画=グランクリュ)

・エアステ・ラーゲ(1級区画=プルミエクリュ)

・オルツヴァイン(村名ワイン)

・グーツヴァイン(醸造所名入りワイン)

 

ソムリエ教本では4段階の品質基準についてかなり細かく基準が記載されております。まずは4段階存在し、グローセ・ラーゲが特級区画である事をチェックしておき、2週目に余裕があれば戻ってくるという判断でいいかと個人的には思います。(あくまで個人的意見ですが・・・)

 

第50回小テスト:ドイツ① 概論

 

第51回:ドイツ① 概論

第50回:ドイツ① 概論

 

最後に

 

ワイン法と交配種やシノニムなど覚える事が多いドイツですが、少しずつ問題をこなしながら着実に覚えていきましょう。ちなみに、ソムリエ教本ではドイツワイン用語集が紹介されます。「Weisswein→白ワイン」など雰囲気でわかるものもあれば、ちょっと見ていないとわからない用語もありますので余裕があればチェックしておきましょう。

 

いずれにせよ、まずは全体像を掴むことが大事です。次回以降はドイツの産地別の特徴を勉強していきましょう。

 

 

(参考)ソムリエフォーフリー

 

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