※本ブログの問題は一般社団法人日本ソムリエ協会が発行している「日本ソムリエ協会教本(2020)」をもとにしています。
ソムリエ・ワインエキスパート試験対策
本記事では、ソムリエ・ワインエキスパート試験にて出題されそうな問題について小テスト形式でご紹介します。何度も問題を繰り返すことで、身についていくと思いますので、コツコツと一つずつクリアしていきましょう。また、選択肢に表示されている単語で、知らない単語などがあればそちらもチェックしておきましょう。
今回はモルドバです。モルドバは1991年に独立した若い国家です。公用語はモルドバ語ですが、実質的にはルーマニア語であるとも言われています。そのため、詳しくは後述しますがルーマニアとセットで覚える事をおススメします。
モルドバのポイント
・土着品種の特徴をみて品種が答えられるようにしておく(ルーマニアとセットで)
・産地は4つのIGPについて場所と特徴を掴んでおく
この地域には以前、モルドバ公国(現在のモルドバとルーマニアの一部)があった事から、ルーマニアとセットで覚えることが効率的です。特にソムリエ教本に記載された土着品種はルーマニアとほぼ被っていますのでルーマニアの回で覚えた方はほぼ問題ないでしょう。
モルドバに関しても「地方の食材と料理」の項は時間があれば別途まとめてご紹介したいと思います。まずはワインの項目に関しておさえることから始めましょう。
気候風土
モルドバは北緯45度から48度に位置しており、ワイン産地も中央部から南にかけて(北緯46度から48度)広がっています。穏やかな大陸性気候です。土壌の約75%は腐食土を豊富に含んだ黒土(チェルノゼム)です。
モルドバワインの歴史
モルドバのワイン造りは5000年前に遡ります。ダキア人(ルーマニアでも出てきました)がワイン造りを盛んに行っており、ローマ人やギリシャ人とブドウ栽培や醸造の技術交換を行っていたと言われています。
モルドバの歴史の中でワイン造りが最も盛んだったのはモルドバ公国の公主シュテファン・チェル・マーレ(1433年~1504年)の時代だったとされています。彼はパハルニック(「杯を持つ人」という意味)という役職を定め、ブドウ畑、醸造、ワインセラーの管理をさせていました。※モルドバ公国の領地は現在のモルドバだけでなく、ルーマニアの一部にもまたがっていましたね。
16世紀にオスマン帝国支配下でワイン造りが停滞しましたが、1812年以降にロシア帝国占領時代では再び盛んになります。ソ連時代(特に1950年代)ではソ連全体のワイン消費量の5分の1がモルドバで製造されていました。ところが、1980年代のゴルバチョフ政権による禁酒政策によりブドウ畑が破壊、ワインも大量投棄されたそうです。
1990年以降、ソ連の影響力低下とともにワイナリーの民営化が始まり、国際品種を中心としたブドウ畑を増やす努力が進みます。1991年の独立以降EU志向が強まるモルドバに対し、ロシアは2006年にモルドバワインの禁輸措置をとりました。
現在は、USAID(米国国際開発庁)やEUの協力により、旧来のロシア向け日常消費ワインから高品質ワインへの質の転換が進められています。
コウノトリとブドウのマーク
モルドバワインには義務付けられていないに関わらず、ほとんどのワインラベルに「コウノトリとブドウ」マークを表示しています。これはシュテファン・チェル・マーレ公時代、戦争で兵士達が疲労困憊の中で一羽のコウノトリが飛来し、くわえていたブドウの房を兵士達に与え、見事に勝利したという伝説に由来しています。シュテファン公は42回戦場に挑みながらほとんど負けたことがなかったそうです。
モルドバの特徴的なブドウ品種
モルドバでは、白ブドウ品種が65%、黒ブドウ品種が35%と白ブドウ品種の方が多いです(2019年現在)。元々この地方にあった「モルドバ公国」という国の一部がルーマニアにもまたがっていた為、ルーマニアの土着品種と共通品種が多いです。
フェテアスカ・アルバ
ルーマニア語で「白い乙女」。「フェテアスカ=乙女、アルバ=白い」です。ルーマニアとモルドバ共和国の土着品種として知られている古代品種です。※ルーマニアの回でも勉強しましたね。
フェテアスカ・レガーラ
ルーマニア語で「高貴な乙女」。「フェテアスカ=乙女、レガーラ=高貴」です。※ルーマニアの回でも勉強しましたね。
フェテアスカ・ネアグラ
ルーマニア語で「黒い乙女」。「フェテアスカ=乙女、ネアグラ=黒い」です。※ルーマニアの回でも勉強しましたね。
ララ・ネアグラ
ルーマニア語で「ララ=貴重」。「ララ=貴重、ネアグラ=黒い」です。ルーマニアでは「バベアスカ・ネアグラ(黒い貴婦人)」として知られています。※ルーマニアの回でも勉強しましたね。
ヴィオリカ
モルドバで開発された白ブドウ品種です。セイベル13666とアレアティコの交配品種で、病気や低温にも強くモルドバの厳しい冬に適した品種として開発されました。※他の品種はルーマニアの回でも勉強しましたので新しく覚えるのはこの品種だけですね。
モルドバのワイン法
品質分類
ワインについては2006年採択「ブドウ・ワイン法」、食品全般の原産地呼称は2008年採択の「原産地呼称法」によって定められています。
DOPワイン(原産地呼称保護)
EU規定に即した基準で、産地や生産者が対象となっています。2016年現在で「ロマネシュティ」と「チュマイ」の2ワイナリーが登録されています。
IGPワイン(地理的表示保護)
指定された地域や食品の名称が対象です。4つの地域・名称が登録されています。
中央部:コドゥル
南東部:シュテファン・ヴォダ
南西部:ヴァルル・ルイ・トラヤン
全域:ディヴィン(指定された製造方法によるワインスピリッツ)
家庭ワインと小規模生産者
「ブドウ・ワイン法」により、家庭内或いは個人消費用で申請なくワイン造りが許されています。そのためほとんどの一戸建て個人宅にはセラーがあり、家庭で造られたワインも保存食のひとつとして保管されているそうです。
また、以下の要件を満たすワイナリーを小規模生産者として定義されています。
①年間10万リットル以下の製造
②1~20ha以下のブドウ畑の所有
③大手のワイナリーから独立した法人
小規模ワインメーカー境界も設立されて、海外で知識を身につけた若手生産者を中心に活動されているようです。
モルドバの全体像
モルドバは4つの区分に分けて覚えましょう。3つの地域と全域で造られるワインスピリッツの「ディヴィン」を覚えるぐらいです。上述した各地域の説明ぐらいでいいのではないかと思います。
第60回小テスト:モルドバ
第60回:モルドバ
第60回:モルドバ

最後に
モルドバ公国の歴史からもモルドバとルーマニアをセットで覚えると効率的です。このように隣国との関連性などを把握しながら横のつながりを意識して覚えていく事も重要ですね。
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