※本ブログの問題は一般社団法人日本ソムリエ協会が発行している「日本ソムリエ協会教本(2020)」をもとにしています。
ソムリエ・ワインエキスパート試験対策
本記事では、ソムリエ・ワインエキスパート試験にて出題されそうな問題について小テスト形式でご紹介します。何度も問題を繰り返すことで、身についていくと思いますので、コツコツと一つずつクリアしていきましょう。また、選択肢に表示されている単語で、知らない単語などがあればそちらもチェックしておきましょう。
今回はチーズです。以前はフランス・イタリア・スペインぐらいでしたが、今はヨーロッパの様々な国のチーズがソムリエ教本に掲載されており、当然出題範囲も広がっています。どこまで覚えるかは非常に難しいところです。どの国のチーズか?何でできたチーズか?という所は4択で消去法でも良いので答えられるようにしたいですね。いつものように最後には小テストを用意していますので問題を解きながら少しずつ覚えていきましょう。。
チーズとは
チーズとは「乳を原料として乳酸菌や凝乳酵素などによって凝固させ、ホエイ(乳清)の一部を取り除いたもの、またはそれらを乳酸菌やカビ等の微生物で発酵・熟成させたもの」と定義されます。
また、日本では「チーズとはナチュラルチーズ、およびプロセスチーズをいう」と定義されています。プロセスチーズはナチュラルチーズを粉砕し、加熱溶融し、乳化したものです。
チーズはメソポタミア文明の地で誕生したと言われています。初期のチーズは乳の酸度を高めて凝固する方法で、その後酵素を利用した凝固法に変化していきました。
チーズのタイプ
フレッシュタイプ

熟成していないつくりたてのチーズで、水分含有量が多い事が特徴です。加塩していないものやペースト状、生クリームが添加されたものもあります。
白カビタイプ

表面にペニシリウム・カンディダムという白カビ菌を噴霧して熟成させたチーズです。白カビ菌の働きによって徐々に内側に熟成が進みます。熟成が進むと白カビ菌が分解したタンパク質がさらに熟成してアンモニアが生成されます。
ウォッシュタイプ

ミルクの段階で枯草菌の一種であるリネンス菌を混ぜ、ミルクを凝固させて型にいれてホエイを排出します。加塩後表面を塩水かお酒で洗い流してから熟成させます。洗う回数やお酒の種類(ビール、ブランデーなど)によって風味も強くなります。
シェーヴルタイプ

一般的にはシェーヴルといえば山羊乳製チーズの事を指します。フランスでは南フランスとロワール川流域が名産地として知られています。8世紀にイスラム教徒のサラセン軍とフランク王国の戦い(732年:トゥール・ポワチエ間の戦い)の中で、サラセン軍が敗走の際に家畜の山羊を置き去りにした事で、シェーヴルチーズが広まったと言われています。その為、シェーヴルは「イスラム教徒たちの置き土産」と呼ばれています。
地域ごとに特徴があり、酸味を和らげるために木炭の粉をまぶす事もあります。山羊の乳にはカロテンがないので、真っ白い生地が特徴です。
青カビタイプ

青カビ菌を混ぜて熟成させるチーズです。代表的な青カビ菌はペニシリウム・ロックフォルティ。青カビ菌は強い塩分濃度下でも繫殖できるため、塩味を強く仕上げる事が多いです。青カビの出す脂肪分解酵素により、シャープで刺激的な風味が強くなる事も特徴の一つです。
非加熱圧搾タイプ(セミハードタイプ)

圧搾タイプとはチーズをプレスして造ったカテゴリーの一つです。非加熱という事で、40℃以上にせず製造します。加熱圧搾タイプと比べて水分が残っていることからセミハードタイプに分類されます。
加熱圧搾タイプ(ハードタイプ)

温度を40℃以上に上げて仕上げた長期熟成に耐えうるチーズです。コンテやボーフォールなどは53℃、パルミジャーノ・レッジャーノは55℃まで温度を上げてつくられます。水分含有量が少なく、ハードタイプに分類されます。
パスタフィラータタイプ

乳を凝固させたカードからホエイを排出、堆積した生地を発酵させた後、細かく裁断しお湯をかけて練って引き伸ばしてつくるチーズです。フレッシュな状態のモッツァレラなどがあります。
チーズの法律
1952年に主要チーズ生産国(フランス、イタリア、スイス、オーストリア、オランダ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー)が「ストレーザ協定」を締結しました。※過去に出題されていました。
1992年にEUがA.O.C.やD.O.C.制度をベースにEUの品質保証システムを創設、EU未加盟のスイスは2000年より独自のA.O.C.(現在はA.O.P.)制度を創設しました。
ワインと同じく、EU加盟国では以下の地理的表示制度によって品質が守られています。EUの品質認証マークが貼られていますので実際の商品をチェックしてみるといいかもしれません。
・P.D.O.(原産地名称保護)
・P.G.I(地理的表示保護)
・T.S.G(伝統的特産品保証):伝統的レシピや製法に基づいて製造
また、「Organic Farming – EU産有機農産物マーク」がついているものもあります。2000年に制定され、すべての有機食品に対する表示が義務化されました。
ここから各国のチーズを紹介していきますが、以下の点について意識するようにしましょう。
・国名
・タイプ
・乳種
チーズに合うワインまで覚えるのは非常に大変です。基本的には「その地方のワインを合わせる」という考えを理解しておけばいいのではないかと個人的には考えています。例えば、シャンパーニュ地方の白カビチーズ「シャウルス」にはシャンパーニュをはじめとするその地方のワインを合わせるという事をイメージしてください。
フランス(主要A.O.P.チーズ)
フランスは様々なタイプがありますので、タイプについても答えられるようにしておきましょう。基本は「牛」ですが、「山羊」や「羊」からできるチーズもありますので注意です。
ヌーシャテル(白カビ:牛:ノルマンディー地方)
ポン・レヴェック(ウォッシュ:牛:ノルマンディー地方)

リヴァロ(ウォッシュ:牛:ノルマンディー地方)

ブリ・ド・モー(白カビ:牛:イル・ド・フランス地方)

ヴァランセ(シェーヴル:山羊:ロワール地方)
シャヴィニョル(シェーヴル:山羊:ロワール地方)
プーリニィ・サン・ピエール(シェーヴル:山羊:ロワール地方)

ピコドン(シェーヴル:山羊:コート・デュ・ローヌ地方)
シャウルス(白カビ:牛:シャンパーニュ地方)
ラングル(ウォッシュ:牛:シャンパーニュ地方)
エポワス(ウォッシュ:牛:ブルゴーニュ地方)
コンテ(加熱圧搾:牛:ジュラ地方)

モルビエ(非加熱圧搾:牛:ジュラ地方)
ボーフォール(加熱圧搾:牛:サヴォワ地方)

フルム・ダンベール(青カビ:牛:オーヴェルヌ地方)

サン・ネクテール(非加熱圧搾:牛:オーヴェルヌ地方)

ロックフォール(青カビ:羊:オクシタニー地方)
ブロッチュ(ホエイフレッシュ:羊+山羊:コルシカ島)
イタリア(主要D.O.P.チーズ)
イタリアのチーズは聞いたことがあるものも多いかもしれません。モッツァレラ・ディ・ブーファラ・カンパーナは「水牛」の乳からできるものなので注意です。
フォンティーナ(半加熱圧搾:牛:ヴァッレ・ダオスタ州)

カステルマーニョ(非加熱圧搾:牛主体:ピエモンテ州)

ブラ(非加熱圧搾:牛主体:ピエモンテ州)
ゴルゴンゾーラ(青カビ:牛:ロンバルディア州)※ピエモンテ州ノヴァーラが現在の中心産地

タレッジョ(ウォッシュ[ソフト]:牛:ロンバルディア州)

アジアーゴ(半加熱圧搾:牛:ヴェネト州)

ピアーヴェ(加熱圧搾:牛:ヴェネト州)
パルミジャーノ・レッジャーノ(加熱圧搾:牛:エミリア・ロマーニャ州中心)
ペコリーノ・トスカーノ(非加熱圧搾:羊:トスカーナ州)
ペコリーノ・ロマーノ(加熱圧搾:羊:ラツィオ州)※サルデーニャ島が現在の中心産地
ペコリーノ・シチリアーノ(非加熱圧搾:羊:シチリア州)
⇒ペコリーノといえば羊を思い浮かべましょう

モッツァレラ・ディ・ブーファラ・カンパーナ(パスタフィラータ[フレッシュ]:水牛:カンパーニア州)
カチョカヴァッロ・シラーノ(パスタフィラータ:牛:イタリア中南部5州)

ラグザーノ(パスタフィラータ:牛:シチリア州)
スペイン(主要D.O.P.チーズ)
スペインは「非加熱圧搾タイプが多い」「羊が多い」という大まかなイメージをもっておいてそこから細部を掴んでいきましょう。
ケソ・マンチェゴ(非加熱圧搾:羊:ラ・マンチャ地方)

イディアサバル(非加熱圧搾:羊:バスク&ナバーラ州)

ケソ・デ・ラ・セレナ(ソフト:羊:エストレマドゥーラ州)
トルタ・デル・カサール(ソフト:羊:エストレマドゥーラ州)
ケソ・デ・ムルシア・アル・ビノ(非加熱圧搾:山羊:ムルシア州)
カブラレス(青カビ:混乳)

その他ヨーロッパ
ポルトガル(D.O.P.チーズ)
ケイジョ・セーラ・ダ・エストレーラ(ソフト:羊:エストレマドゥーラ州)※スペインとセットで
ベルギー(A.O.P.チーズ)
フロマージュ・ド・エルヴ(ウォッシュ:牛:リエージュ州)
オランダ(B.O.B.チーズ)
ノールド・ホランツェ・ハウダ(非加熱圧搾:牛:北ホラント州)
ノールド・ホランツェ・エダメル(非加熱圧搾:牛:北ホラント州)
ドイツ(g.U.チーズ)
アルゴイヤー・ベルクケーゼ(加熱圧搾:牛:バイエルン州アルゴイ地方)
アルゴイヤー・エメンターラー(加熱圧搾:牛:バイエルン州アルゴイ地方)
オーストリア(g.U.チーズ)
テロラー・アルムケーゼ/アルプケーゼ(加熱圧搾:牛:チロール州)
英国(P.D.O.チーズ)
ウェスト・カントリー・ファームハウス・チェダー・チーズ(非加熱圧搾:牛:4つの州)
ブルー・スティルトン・チーズ(青カビ:牛:ダービーシャー他)
ギリシャ(P.D.O.チーズ)
フェタ(フレッシュ:羊主体+山羊)

スイス(A.O.Pチーズ)
スプリンツ(加熱圧搾:牛:中央部)
レティヴァ(加熱圧搾:牛:南西部)
グリュイエール(加熱圧搾:牛:西部)

エメンターラー(加熱圧搾:牛:中部、北東部)

テット・ド・モワンヌ(加熱圧搾だがセミハードに分類:牛:西北部)
ヴァリサー・ラクレット/ラクレット・デュ・ヴァレー(非加熱圧搾:牛:南西部)

ヴァシュラン・モン・ドール(ウォッシュ[ソフト]:牛:西部)

スイスはほとんどが「牛」、加熱圧搾・非加熱圧搾タイプが多いです。
第70回小テスト:チーズ
第70回:チーズ
第70回:チーズ

最後に
今回はソムリエ教本から抜粋していますので、余裕があればその他のチーズについてもチェックするという感じでしょうか。チーズも完璧に覚えるとなると大変ですので、国ごとの特徴をざっくり覚えておいて、「国」・「タイプ」を消去法でもいいので答えられるようにというぐらいで良いのはないかと個人的には思います。
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