※本ブログの問題は一般社団法人日本ソムリエ協会が発行している「日本ソムリエ協会教本(2020)」をもとにしています。
ソムリエ・ワインエキスパート試験対策
本記事では、ソムリエ・ワインエキスパート試験にて出題されそうな問題について小テスト形式でご紹介します。何度も問題を繰り返すことで、身についていくと思いますので、コツコツと一つずつクリアしていきましょう。また、選択肢に表示されている単語で、知らない単語などがあればそちらもチェックしておきましょう。
今回はビール、ウイスキー、ブランデーについてまとめます。ソムリエ試験、ワインエキスパート試験はワインに関する出題がメインですが、その他のお酒についても出題が多くみられます。完璧に覚えようとすると結構大変です。まずは重要なキーワードをおさえて問題を解きながら覚えていくことにしましょう。
ビール
概要
ビールの生産量はワインの約8倍。国別では中国が最も多く、一人当たりに換算するとチェコが最も多いそうです。
歴史
人類最初の文明といわれるシュメール文明でもすでにビールが飲まれていそうで、非常に長い歴史を誇ります。あの有名な「ハムラビ法典」にもビールに関わる法律が制定されていたそうです。※ビールを水で薄めた者は水の中に投げ込まれるらしいです・・・
ドイツでは1516年に「ビール純粋令」により、原料として麦芽、ホップ、水以外は使用してはならないとしました。その後、研究者達の活躍により、ビールの品質が向上します。ビール三大発明として覚えておきましょう。
ビール三大発明
1) パスツールが低温殺菌法(パストリゼーション)を発明
⇒長期間変質しないようになった
2) ハンセンが酵母の純粋培養法を発明
⇒ビールの品質向上
3) リンデがアンモニア冷凍機を発明
⇒工業的に四季を通じて醸造が可能
ビールの原料とタイプ
原料
麦芽:主に二条大麦が使用されます(もちろん例外もあります)
ホップ:ルプリンの働きにより、特有の苦みや香りが与えられます
副原料:麦、米、トウモロコシ、デンプン(スターチ)などが使われます。
⇒(日本では)2018年より果実又はコリアンダーや香辛料、ハーブ、花、蜂蜜などが使用可能になりました。
分類
使用する酵母の性質により、以下の2種類に分類されます。
下面発酵ビール:発酵時に酵母が沈降
上面発酵ビール:発酵中に酵母が液面に浮かび上がる
熱処理しないで濾過によって酵母を完全に除去したものを「生ビール」といいます。また、ラガービールとは貯蔵工程で熟成させたビールのことです。日本では特定の基準を満たしていれば表示することが可能です。
世界の主なビール
ここは試験でも出題されやすいポイントです。上面発酵ビールなのか下面発酵ビールなのかを確認しましょう。また、説明をみて名前を答えられるようにしておきましょう。
ピルスナー
下面発酵ビールです。チェコのプルゼニュ生まれのビールで日本の淡色ビールはこのタイプです。アルコール分も4から5度ぐらいです。※恐らく日本人が一番飲んでいるタイプのビールでしょう
ボック
下面発酵ビールです。ドイツのアインベック発祥。アルコール分は6.0~6.5度で、ドッペルボックという更にアルコール分が高いタイプもあります。
エール
上面発酵ビールです。イギリスで発展したビールです。淡色でホップの香りが利いたペールエール。中濃色で麦芽の香りを出したマイルドエール。色の濃いブラウンエール。ホップの苦みが利いたビターエール。スコットランドのスコッチエール等様々な種類があります。アルコール分は2.5~5.5度とかなり低いです。
アルト
上面発酵ビールです。ドイツのデュッセルドルフで発展した濃いビールで、アルコール分は4.5~5.5度。
バイツェン
上面発酵ビールです。ドイツのバイエルン地方で発展したビールで、小麦麦芽を使用している事が特徴です。アルコール分は5.0~5.5度です。
トラピスト
上面発酵ビールです。ベルギーに伝わる古いビールで、修道院で造られていたことから名付けられました。アルコール分は6~10度です。
スタウト
上面発酵ビールです。イギリスで原料に砂糖が許可され造られ始めました。日本でも有名な「ギネス」もスタウトです。アルコール分は4~8度で、スイートスタウトと呼ばれる甘いスタウトもあります。
ランビック
ブリュッセル地方で造られるベルギーを代表するビールです。大麦麦芽の他、小麦も使用され、古いホップを使用します。アルコール分は5~6度で、チェリーやラズベリーなどを加えたフルーツビールもあります。
ウイスキー
概要
ウイスキーとは、穀類を原料として、糖化した液を発酵、蒸留した後にその留液を木製の樽で貯蔵・熟成させた蒸留酒です。
1種の原酒のみを使った製品を「シングルバレル」といい、2樽以上を使う場合は「ブレンダー」という職人によるブレンド作業が生じます。なお、ブレンドした場合、ラベルの熟成年数は「使用する原酒中最も貯蔵期間が短いもの」としなければいけません。
製法
モルトウイスキーとグレーンウイスキーの違いを理解しておきましょう。
原料
モルトウイスキー:主原料は二条大麦麦芽 (麦芽=モルト)
グレーンウイスキー:主原料はとうもろこし、小麦 (穀物=グレーン)
酵母
モルトウイスキー:エール酵母(ブリュワーズ酵母)のみ
グレーンウイスキー:ディスティラーズ酵母のみ
蒸留
モルトウイスキー:ポットスチルと呼ばれる銅製の蒸留釜を使用し、通常2回行う
グレーンウイスキー:連続式蒸留機を使用
なお、蒸留所名を表記できるのは、シングルモルト、シングルグレーンと同一蒸留所のシングルモルト、シングルグレーンのブレンドのみです。「シングル」という表記から誤解を生みますが、ブレンドはしてもOKという事です。
五大ウイスキー
アイリッシュウイスキー
初期には野菜や果物も原料にしていたそうで、原料の多様性と優れた蒸留技術が特徴です。スコッチのブレンデットウイスキーにおされて数は減少しましたが、この10年間は覚ましい伸びを示しているそうです。
スコッチウイスキー
初期のスコッチは荒々しく飲みにくい為にアイリッシュに遅れをとっていましたが、1830年のアイルランド人イーニアス・カフェによる連続式蒸留酒の発明や、1860年のブレンデットウイスキーの誕生によって人気が高まりました。
アメリカンウイスキー
アメリカンウイスキーの中でも、バーボンウイスキーはトウモロコシを51%以上加えて造られるウイスキーです。内面を焼いたアメリカンオーク樽での熟成によって、甘くて口当たりの良いウイスキーに仕上がります。一方、ライウイスキーはライ麦を51%使用する必要があります。
カナディアンウイスキー
余剰穀物や製粉所の副産物を有効利用する目的で発展してきました。広く受け入れやすくクセのない酒質を持ちます。
ジャパニーズウイスキー
五大ウイスキーの中では最も新しいウイスキーです。醸造工程をスコッチに学び、山崎蒸留所でのモルトウイスキーづくりから始まりました。サントリーの創業者・鳥井信治郎やニッカウヰスキーの竹鶴政孝(マッサンというドラマで有名になりましたね)らが「スコッチウイスキーを日本人の手でつくりたい」という想いを持ちウイスキーづくりを進めました。
ブランデー
概要
通常は果実を原料とした蒸留酒を指すことが多く、ブドウを原料としたグレープブランデーが多いです。その他、リンゴ、サクランボなどの果実も原料となります。フランス語では「オー・ド・ヴィー=蒸留酒」で、以下のように区別されます。
・オー・ド・ヴィー・ド・ヴァン(ワインを蒸留したもの)
・オー・ド・ヴィー・ド・マール(果実酒かすを蒸留したもの)
・オー・ド・ヴィー・ド・フリュイ(ブドウ以外のフルーツブランデー)
コニャック(フランス)
フランス西部のコニャック地方でつくられる、ブドウを原料としたブランデーです。
ブドウ品種
ユニ・ブラン(サン・テミリオン・デ・シャラント)、フォル・ブランシュ、コロンバール、モンティル、セミヨン、フォリニャン(補助品種:10%以内)
蒸留
単式蒸留器のみ(2回実施)です。これは重要です。
6つの地区と特徴
1) グランド・シャンパーニュ
⇒石灰岩土壌、最高品質
2) プティット・シャンパーニュ
⇒石灰岩土壌
3) ボルドリー
⇒珪土を含む粘土質土壌。
4) ファン・ボワ
⇒粘土を含む石灰質。最も面積が広い
5) ボン・ボワ
⇒砂質、軽く粗い
6) ボワ・オルディネール
⇒砂質。最も面積が狭い
なお、ソムリエ教本では熟成年数と表示規定が紹介されています。貯蔵年数(=コント)と表示名が問われることもありますので、余裕があればチェックしておきましょう。
アルマニャック(フランス)
フランス南西部のアルマニャック地方でつくられるブドウを原料としたブランデーです。石灰岩土壌が最高品質であったコニャック地方と異なり、砂土主体の土壌です。コニャックと間違えないようにしましょう。
ブドウ品種
主に、ユニ・ブラン、フォル・ブランシュ、バコ・ブラン、コロンバールを使うことが多いです。
蒸留
単式蒸留器(蒸留2回)の他に連続式蒸留機もOKです。コニャックとは異なります。これは重要です。
3つの地区と特徴
1) バ・ザルマニャック
⇒砂の最も多い土壌。最高品質。アルマニャック向けのブドウ栽培面積の57%。
2) アルマニャック・テナレーズ
⇒バ・ザルマニャックの次に高品質。粘土石灰質。アルマニャック向けのブドウ栽培面積の40%。
3) オー・タルマニャック
⇒石灰質の多い土壌。
ヴィンテージ・アルマニャック
単一年度に収穫されたブドウのみで造られその収穫年を表示できる。最低熟成年数は10年。
アルマニャックもコニャックと同様に熟成年数を表示します。アルマニャックの方は3つしかないので、先にアルマニャックを覚えた方がいいかもしれません。※今回は割愛しますが、余裕があれば本ブログでもご紹介します。
その他の国のグレープブランデー
・ブランデー・デ・へレス:スペインのシェリーの産地で熟成
・ブランデー・イタリアーノ:イタリアのブランデー
・ヴァインブラント:ドイツのブランデー
・ピスコ:南米のペルーとチリなど
ブドウの搾りかすを原料としたブランデー
マール(フランス)
フランスでブドウの搾りかすから造られるブランデーです。ワイン生産地域であればどこでも生産できるので、広域で生産されています。アルコール分は40度以上のものが多いです。
グラッパ(イタリア)
イタリアでブドウの搾りかすから造られるブランデーです。樽熟成はほとんどしないで色がついていないものが多いですが、最近は数年間熟成されたものも人気が出ています。
リンゴを原料としたアップルブランデー
リンゴを発酵させたアップルワイン「シードル」をつくり、その後蒸留させたものです。フランス北部やイギリス、アメリカで造られています。
カルヴァドス(フランス)
フランス北部のカルヴァドス地方で生産されるアップルブランデーです。カルヴァドスは230種のリンゴおよび121種の梨が認められています。それ以外のフランスのアップルブランデーは「オー・ド・ヴィー・ド・シードル」といいます。
・カルヴァドス(2年以上熟成)
・カルヴァドス・ドンフロンテ(3年以上熟成)
・カルヴァドス・デュ・ペイ・ドージュ(2年以上熟成)
その他のフルーツを原料としたブランデー(オー・ド・ヴィー・ド・フリュイ)
ブドウ・リンゴ以外のフルーツを原料としたブランデーです。例えば、サクランボを発酵・蒸留したブランデーはフランスでは「キルシュ」、ドイツでは「キルシュワッサー」と呼ばれます。生産な盛んな地域はフランス、ドイツ、スイスなどの寒冷地が多いです。
その他、原料を覚えておきましょう。
・スモモ(プリュヌ)
・黄色のプラム(ミラベル)
・紫色のプラム(ケッチェ)
・コケモモ(ミルティーユ)
・木イチゴ(フランボワーズ)
・黒スグリ(カシス)
・アンズ(アブリコ)
・洋梨(ポワール・ウイリアム)
第73回小テスト:酒類飲料概論① ビール、ウイスキー、ブランデー
第73回:酒類飲料概論① ビール、ウイスキー、ブランデー
第73回:酒類飲料概論① ビール、ウイスキー、ブランデー

最後に
ビール、ウイスキー、ブランデーといったワイン以外のお酒が今回登場しました。取捨選択して覚えるところはしっかり覚える。覚えるのが大変な所は消去法で答えられるようにする事も大切です。問題を解きながら感触をつかんでいきましょう。
(参考)ソムリエフォーフリー
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